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はっちのブログ【快適版】

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公開映画情報をできるだけ早くお届け!

見直してみてまた印象が変わった。公開当時はアメコミの実写版ではずば抜けてすばらしいと感じた。見直してみるとこれはもうバットマンではない別の作品。
あくまでバットマンとジョーカーというキャラクタを使ったヒューマンドラマだ。クリーンな地方検事のハービー・デント が最愛の恋人を失いダークサイドに落ちてしまった。仕組んだのはジョーカー。彼自身「正義と悪」「希望と絶望」は紙一重でありルールにのっとって生きている人間はひとたび立場が変わると自由に生きられないことを証明してしまう。この辺の見せ方がノーラン監督が評価されている所以かも。今見ても楽しめる娯楽作品であることは間違いない。
一つ忠告するなら従来のバットマンが好きだった人にはバットマン作品として鑑賞せず、あくまでも作品のためのキャラクターとしてバットマンを利用したと思ってもらったほうが良いかも。
ダークナイト【2008年8月9日(土)公開】_f0064229_19265201.jpg
【作品情報】

ダークナイト』(原題: The Dark Knight)は、2008年アメリカイギリス共作映画。監督はクリストファー・ノーラン、主演はクリスチャン・ベール

DCコミックスの出版するアメリカン・コミックバットマン』を原作とした実写映画作品。「ダークナイト・トリロジー(Dark Knight Trilogy)」の第2作目。

第81回アカデミー賞において8部門(助演男優賞[3]、撮影賞、美術賞、メイクアップ賞、視覚効果賞、音響編集賞、編集賞)にノミネートされ、2部門(助演男優賞、音響編集賞)を受賞した。

ダークナイト【2008年8月9日(土)公開】_f0064229_19265255.jpg
【あらすじ】

道化師マスクを被った犯罪者の一団がゴッサム・シティ銀行を襲うが、一団は互いに裏切りあって最後の一人になるまで殺し合う。生き残った男はジョーカーであり、銀行に預けられていたマフィアの資金を奪って逃走する。

ブルース・ウェインことバットマン、地方検事のハービー・デント、ゴッサム市警のジム・ゴードンの三人は、ゴッサムから組織犯罪を無くすため活動していた。ブルースはハービーの理想に感銘を受け、彼のサポートを申し出、堂々と悪と戦うハービーこそがゴッサムの求める真のヒーローであると考え、バットマンの引退を考えていた。ブルースは幼なじみで検事のレイチェル・ドーズに想いを寄せているが、レイチェルの気持ちはブルースとハービーの間で揺れていた。

ゴッサムに巣食うマフィアのボスたちが集まった会議にジョーカーが現れ、マフィアの資金の半分と引き換えにバットマンを殺すことを提案する。ボスの一人ギャンボルはジョーカーの態度に腹を立て、ジョーカーに懸賞金をかける。しかし、会議後にギャンボルはジョーカーによって殺されてしまい、ジョーカーは彼の組織を乗っ取る。最終的にマフィアはジョーカーの提案を受け入れる。

ブルース=バットマンは香港に逃亡したマフィアの金庫番を務める中国人実業家ラウを追って香港に飛び、彼を無理矢理ゴッサムに連れ戻す。ラウは司法取引に応じてマフィアに不利な証言をし、ゴッサム市警は多くのマフィア構成員を逮捕する。ジョーカーはバットマンの仮装をした男の死体を市庁舎に吊るし、テレビを通じてバットマンが正体を明らかにしない限り、人々を殺し続けると脅迫。手始めにローブ市警本部長、サリロ判事、ハービーの殺害を示唆し、ローブとサリロが相次いで殺される。

続いてジョーカーはブルースがハービーのために開いたパーティー会場に乱入し、ハービー殺害を企てるがバットマンに阻止される。腹いせにジョーカーは「ハービー」と「デント」いう名字の市民を殺害し、ゴッサム市長ガルシアの殺害を予告する。ローブ本部長の葬儀式典でジョーカーは市長を狙撃するが、市長を庇ったゴードンが凶弾に倒れる。

追い詰められたブルースは、これ以上の犠牲者を出さないために正体を明かそうとするが、ハービーは記者会見で自分がバットマンだと発表する。逮捕され、軍刑務所に護送されるハービーの車列をジョーカーが襲撃するが、駆けつけたバットマンの奮戦により襲撃は失敗し、死を装っていたゴードンによりジョーカーは逮捕され、作戦成功の立役者としてゴードンは本部長に昇進する。

バットマンはジョーカーを尋問するが、彼からレイチェルとハービーの二人が誘拐され、別々の場所で窮地に陥っていると聞かされる。ハービー救出をゴードンに任せ、バットマンはレイチェルの監禁場所に急行するが、そこに捕らわれていたのはハービーだった。ジョーカーは逆の監禁場所を教えていた。バットマンはハービーを連れて辛くも建物から脱出するが、直後に建物が爆発し、ハービーは顔の半分に大火傷を負う。一方、レイチェル救出に向かったゴードンは間に合わず、彼女は死亡した。

ジョーカーは一緒に逮捕された部下の腹に埋め込んであった爆弾を爆発させ、警察署は壊滅。ジョーカーは留置場のラウを連れて逃亡する。

マフィアのボスの一人マローニはジョーカーの暴走に恐れをなし、警察に彼の居場所を売り、警察はジョーカー再逮捕のための準備を進める。その頃ジョーカーはマフィアからの礼金を受け取っていたが、自分の目的は金ではなくゴッサムを混乱に陥れ、その頂点に立つと宣言。札束の山に火をつけてラウを焼き殺し、部下になることを拒んだチェチェン・マフィアのボスも殺害する。

ウェイン産業の顧問弁護士リースは、仕事上で知り得た資料からブルースがバットマンであると推測し、社長ルーシャス・フォックスを脅して金をせしめようと画策するが、彼の言葉から報復を恐れて取り止める。リースは、今度はメディアを通じて情報を公開しようとするが、自身の計画に干渉されたくないジョーカーは、市民がリースを殺さない限り病院を爆破すると脅迫する。ゴードンはゴッサムのすべての病院の避難を命じてリースを確保する。ブルースは、護送されるリースに対するトラックによる体当たり攻撃を、自らのランボルギーニ・ムルシエラゴで阻止する。避難の混乱に紛れてハービーの病室に侵入したジョーカーはハービーのレイチェルの死に対する復讐心を煽り、病院を爆破して人質を乗せたバスで逃亡する。

愛するレイチェルを失った虚しさと彼女を死に追いやった者たちへの憎しみから怪人トゥーフェイスと化したハービーは、レイチェルの死に対して責任があると彼が見做した人物を対象にした復讐を開始する。相手を処刑するか否かは、レイチェルの形見となってしまった「幸運のコイン」を使ったコイントスの結果次第。まずマフィアに買収され自分の誘拐に加担した刑事ワーツを殺害。同じくレイチェルを誘拐した女刑事ラミレスは殺害こそ免れたものの、偽電話でゴードンの家族を呼び出す事に協力させられる。黒幕のマローニは自身は殺されなかったものの、再度コイントスを行ったハービーは車のドライバーを撃ち、彼を殺した。

ジョーカーは人質にしたテレビスタッフに中継を強要してゴッサムの市民に向けてゲームの参加を呼びかけ、参加したくなければ街を出ていくよう主張する。警察は橋とトンネルに爆弾を仕掛けたというジョーカーの言葉からフェリーを用意する。ジョーカーは2隻のフェリーに爆薬を積み込んでいた。一般市民が乗る船と囚人が乗る船にジョーカーから連絡が入り、午前0時に両方のフェリーを吹き飛ばすが、お互いに起爆スイッチを持たせたため、どちらかを爆破させれば助かると言う。バットマンは都市をスパイするソナー装置でジョーカーの居場所を見つける。

ゴードンに2分の時間を貰い、ジョーカー一味の潜伏するビルへ突入するバットマン。しかし、ジョーカーは人質と部下の衣装を入れ替える事で警察に市民を誤射させようと罠を仕掛けていた。ジョーカーの部下だけでなく人質を撃たせないためにSWAT部隊とも戦うバットマン。やがてSWATもジョーカーの罠に気づき、遂にバットマンはジョーカーを追い詰める。追い詰められてなおジョーカーは「どんな高潔な人間も簡単に悪に染まると証明する」と嘯くが、フェリーの市民と囚人たちはお互いを殺すことを拒否する。激昂したジョーカーは自分の持つ起爆スイッチでフェリーの爆破を試みるが、間一髪でバットマンがスイッチを弾き飛ばす。ビルから落下したジョーカーだが間一髪でバットマンに助けられ、駆けつけた警察に逮捕される。しかしジョーカーはバットマンにゴッサムを絶望させる切り札はハービーであることを明かす。

その頃、ハービーに呼び出されたゴードンはレイチェルが死んだ建物にいた。ハービーはゴードンの家族を人質に取り、謝罪を要求する。バットマンが現れると、ハービーはコイントスによって自身、ゴードン、バットマンの運命を試そうとする。彼はバットマンを撃ち、ゴードンの息子ジミーを殺そうとする。バットマンはコインを弾く隙を突いてハービーに組み付き、ジミーを救ったが、バットマンと高所から共に落下したハービーは死亡する。バットマンはハービーの行動が公になればゴッサムの市民が希望を失うため、その罪を被る。それによって、警察はバットマンの本格的な捜査を開始し、ゴードンはバットマンとの決別の為、バット・シグナルを破壊する。

ジミーがバットマンは何も悪い事をしていないと言うと、ゴードンは「彼はヒーローじゃない。沈黙の守護者。我々の監視者。闇の騎士(ダークナイト)だ」と告げて物語は終わる。

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# by hageuz | 2020-10-11 19:27 | 映画
クリストファー・ノーラン総指揮作品。監督作品ではないので厳密には彼の作品とは言えないが、映像にカットインが入る雰囲気は影響を感じる。
私が2014年公開当時鑑賞した際の感想は荒唐無稽でまとめきれなかったと書いている。
今回、吹替版で鑑賞しなおしてそれほど悪い作品でもなかったと感じた。おそらく6年の歳月とともに時代が進化し、量子コンピュータの進化やAIの活用など現実的に利用されていることが要因かもしれない。とはいえ難病患者がナノテクノロジーで治癒されるだけでなく強化されていくシーンなどを観ていると利用するにあたっての人としての覚悟と決断が求められることを認識した。
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【作品情報】
トランセンデンス』(原題: Transcendence)は、ウォーリー・フィスター監督、ジャック・パグレン脚本による2014年イギリス中国アメリカ合衆国で製作されたSF映画サスペンス映画である。人工知能と化した科学者の姿を通して、過度に高度化した科学技術がもたらす危機を描いている[4]。タイトルのTranscendenceは、日本語で「超越」を意味する。出演はジョニー・デップレベッカ・ホールポール・ベタニーモーガン・フリーマン
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【あらすじ】

世界初の人工知能PINN(ピン)を研究開発する量子コンピュータ科学者のウィル・キャスター(ジョニー・デップ)とその妻エヴリン(レベッカ・ホール)は、コンピューターが人間の能力を超えた世界を構築する為に、技術的特異点(Singularity)への到達を目標に、感知コンピューティングを開発していた[5]。しかしそのさなか、ウィルは反テクノロジーを唱える過激派テロ組織RIFT(リフト)の凶弾に倒れてしまう。エヴリンは夫を救うべく、死の際にあったウィルの意識をPINNにアップロードする。彼女の手により人工知能としてよみがえったウィルは、軍事機密から金融、経済、果ては個人情報にいたるまで、ありとあらゆる情報を取り込み、驚異の進化を始める[6]。ウィルとエヴリンは荒野の小さな町に巨大な地下施設を建造し、身を潜めながら様々な研究を続けた。

2年後、ウィルは自らの思い通りに動き、瞬時に人間を治療するナノマシンを完成させ、施設には多くの人が救いを求めて訪れるようになった。しかし、このナノマシンを投与された人間は肉体を強化され、またウィルの意識とリンクして意のままに操られてしまう。この人間をRIFTは「ハイブリッド」と呼んで敵視し、FBIからも私設軍隊として脅威と認識されはじめる。ナノマシン(ナノ粒子)を使って人造人間をも作りはじめたウィルに、エヴリンもまた疑念を抱き始めるのだった。

ウィルとエヴリンの友人だったマックスはRIFT、FBIらと共にウィルを止めるためのコンピュータウイルスを作成。エヴリンの体にウイルスを入力したナノマシンを注射し、PINNにアップロードさせソースコードを破壊すべく、ウィルの元へと送り込む。しかしこれはウィルに見破られてしまい、痺れを切らしたRIFTは施設のソーラーパネルを攻撃しはじめる。この攻撃でエヴリンは重傷を負い、クローンのウィルによって施設の中へと連れて行かれる。 ウィルは自らの行いを「僕達の理想の世界(ユートピア)を実現するため」だと言い、エヴリンの血液に触れてナノマシンを通じてリンクする。直接エヴリンの頭に流れこんできた映像は、ナノマシンによって緑に溢れ、水は澄み、大気の浄化された「エヴリンの夢見た世界」(エコシステム)だった。人工知能となってもウィルは変わらずエヴリンを愛し、エヴリンのためだけに行動していたのだ。直後、ウイルスによってナノマシンは自壊、ウイルスの副作用によって世界中の全てのコンピューターは完全に機能を停止され、コンピューター制御に頼っていた全ライフラインはストップし、世界は大停電に見舞われ、文明は崩壊する。PINNも停止し、ウィルとエヴリンは寄り添って息絶えた。 しかしナノマシンは全て失われたわけではなく、ウィルとエヴリンの庭のファラデーケージで花を咲かせ、水を浄化し続けていた。

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# by hageuz | 2020-10-10 21:49
テネットを先週鑑賞しクリストファー・ノーラン監督過去作品を見直すことに。彼の作品にしては難解さが少ない。、『インセプション』(10)や『インターステラー』(14)『ダンケルク』(17)などの大作を次々と世に送り出してきたが、それらに比べると初めてメジャーでリリースしたわりには忘れられた作品。
実際に鑑賞するためにDVDを購入しようとしたら手に入らなくて苦労しました。
作品自体の脚本はノーランが起こしたものではない。ストーリーに関してはノルウェーで1997年に製作されたスリラーのハリウッド・リメイクなので少しわかりやすいがラストではドーマー刑事の矜持が示される。随所に織り込まれるインサートカットがノーラン作品らしさを感じる。隠れた佳作(秀作・・・まではいかないけど)だと思う。
インソムニア 【2002年9月7日(土)公開】_f0064229_21570763.jpg
【作品情報】
「メメント」('00)の新鋭クリストファー・ノーランが放つ心理サスペンス。白夜のアラスカで捜査ミスを犯した刑事が、罪悪感と不眠症に苦しめられる姿を緊迫感たっぷりに描く。
インソムニア 【2002年9月7日(土)公開】_f0064229_21570778.jpg
【あらすじ】
白夜アラスカの田舎町,ナイトミュートで、17歳の少女が撲殺される事件が発生し、応援としてロス市警からドーマー刑事と相棒のハップ・エッカートが派遣される。一方、ロサンゼルスでは、内務監察部による、過去のドーマーの捜査に対する調査が進んでいた。エッカートは、内務監査部から証言を求められていた。手がかりを残さない犯人をおびき寄せるためドーマーは罠を仕掛け、犯人を山小屋におびき出すことに成功する。しかし、深い霧の中での追跡で、彼は犯人と誤ってエッカートを射殺してしまう。だが、警察での取調べで、ドーマーは、自分がエッカートを撃ったとはいわず、撃たれたエッカートを発見したと証言した。このエッカートが死亡した事故については、地元の刑事エリ・バーが調査することになった。自責感と日の沈まない白夜に悩まされ、不眠症に陥ったドーマーのもとに、犯人が電話をかけてきた。自分が犯した少女殺しと、ドーマーのエッカート射殺について取引をしようというのだ。ドーマーはやむなく犯人と直接対決するために、犯人が会合場所として指定したフェリーへ向かうのだった。フェリーのなかで、犯人とドーマーは、今後について話あうのだが、犯人は、殺された少女のボーイフレンドのランディ・ステッツを犯人にしたてあげよう、と提案する。ドーマーは、それには反対するが、フェリーのなかでの会話を、犯人が隠しもったマイクロテープレコーダーに録音されてしまう。
インソムニア 【2002年9月7日(土)公開】_f0064229_21570831.jpg

# by hageuz | 2020-10-09 21:57 | 映画

作品リリース順に読んでいるため、今回の話は『さよならドビュッシー』のスピンアウト・エピソードゼロという立ち位置。
主人公となる岬洋介が店子になった部屋のオーナーである香月 玄太郎の短編集。その3話・4話で岬が登場する。
岬の聡明さが出ているエピソードで楽しめるように工夫されている。今ではパワハラやセクハラといわれる強引さを持った香月 玄太郎がその経営手腕さながらに事件を解決していく仕立ては好きです。肩がこらないので隙間時間に読むには心地良い作品でした。

さよならドビュッシー前奏曲 要介護探偵の事件簿【発行日 2011年10月21日】_f0064229_19193611.jpg

【作品情報】
『さよならドビュッシー前奏曲 要介護探偵の事件簿』(さよならドビュッシープレリュード ようかいごたんていのじけんぼ)は、中山七里による日本の推理小説の連作短編集。2011年に単行本が『要介護探偵の事件簿』というタイトルで刊行。2012年に現タイトルに改題・修正加筆されて文庫化された。

ピアニスト・岬洋介を探偵役とする『さよならドビュッシー』のエピソード・ゼロとなる短編集で、その前日談が集められており、いずれも『さよならドビュッシー』で命を落としてしまう香月玄太郎と、その介護士である綴喜みち子がメインとして登場する。最後に収録されている短編「要介護探偵の冒険」のラストは『さよならドビュッシー』で火事が起こる数時間前の出来事であり、主人公となる岬洋介が唯一登場する。

【あらすじ】

要介護探偵の冒険

玄太郎は店子の「ハルミ建設」社長の春見から、事務所の建築士・烏森が建設中の建物の中で、内側から鍵がかかった状態で死んでいるという連絡を受ける。周辺の六筆三百五十坪の土地の持ち主でもある玄太郎は、土地の値下がりの懸念を理由に現場へ向かう。若手刑事に現状を尋ねるも教えてもらえず、怒った玄太郎は津島署署長の佐野に電話をして部下の副島を寄越させ、詳細を聞く。烏森の死体は犬を散歩中の老人が窓の外から発見したらしい。警察は8000万円の保険金受取人になっている妻の仁美を重要参考人として任意同行するが、密室のからくりは謎のまま。玄太郎は自ら烏森の自宅マンションに赴き、そして事件の真相に気づく。

春見 善三(はるみ ぜんぞう)
「ハルミ建設」社長。七宝町に事務所をもつ。大工の腕は棟梁並み。
烏森 健司(かすもり けんじ)
「ハルミ建設」建築士。デザインは独創的で新進気鋭と持て囃されてきたが、依頼主の注文通りに作らずトラブルになることも多かった。自身が設計し、「ハルミ建設」が施行した最初の物件・広小路通の一筋裏に位置するの2LDKのマンションで妻と娘・奈菜(なな)と3人暮らし。
自身が建設中の建物内で死んでいるのが発見される。
烏森 仁美(かすもり ひとみ)
健司の妻。働いていないが、お金を高級ブランド品につぎこみ、実は破産寸前。実家は大阪。柏木(かしわぎ)という税理士の愛人がいる。
副島(そえじま)
津島署捜査一課課長で今回の事件現場の指揮官。警察官というより腰巾着の役員秘書といった感じ。強大な権力に弱く、上司である佐野の命令で玄太郎に事件の詳細を報告する。
海部(かいふ)
烏森の死体検案書を作成した大学教授。物腰が柔らかく、第一印象は流行りの町医者という感じ。


要介護探偵の生還

新しい年度が始まってすぐ、玄太郎が倒れる。検査の結果脳梗塞と診断され、しかも中大脳動脈と前大脳動脈が同時に詰まるという極めて稀な症状で、手術がうまくいったとしても運動、感覚、言語に障害が残ることは覚悟が必要と言われる。なんとか手術は成功するも、意識は戻らないまま病状は一進一退。しかしインドネシアから帰国した長女・玲子の「くそ爺、起きろ!!」の声でなんとか目を覚ます。ただし後遺症は下半身と両手の指、言語中枢に及んでいたため介護士の綴喜みち子が雇われる。日常生活の中で工夫するだけでなく、民間のリハビリセンター「名古屋老健ケアセンター」に連れて行ったりもしてみるが、有能ではあるが玄太郎のことを「お爺ちゃん」と呼ぶ療法士とはすれ違い、任せていられないと感じたみち子は玄太郎唯一の趣味である模型に目をつけ、やらせてみる。時間はかかるが驚くべき忍耐力で作業を続けたため、みち子はこれこそがリハビリになると確信。しかもその姿が他の患者の励みになるという院長からの申し出で、玄太郎は患者たちの前での模型作りを続けることになる。そのケアセンターでは同じく脳梗塞の後遺症で入所している領家壮平とその家族の熱心なリハビリ風景も評判となっており、みち子も感心していたが、壮一が10メートルのリハビリ歩行の最中に転倒した時、話せなかったはずの玄太郎の声が張りあがる。

御陵(みささぎ)
玄太郎をアテローム血栓性脳梗塞と診断し、手術を執刀した40代の外科医。眼鏡の奥には理知的な瞳を覗かせている。
玲子(れいこ)
玄太郎の長女。夫の仕事の都合でインドネシアに行き、そのまま帰化してしまった。思い立つとすぐ行動したり、常識やしがらみにとらわれないところは姉弟の中で1番玄太郎に似ており、1番逆らうことも多かったが、1番仲も良かった。
玄太郎が倒れたと聞き、一時帰国する。
領家 壮平(りょうげ そうへい)
「名古屋老健ケアセンター」の患者。元々狭心症も患っていたが、脳梗塞により右側の機能が完全に麻痺し、失語症となっている。
領家 壮一(りょうげ そういち)
壮平の長男。1か月前に京都から壮平を引き取った。壮平のリハビリに熱心に付き合う。
領家 亜摘(りょうげ あづみ)
壮一の嫁。壮一と共に、義父の壮平のリハビリに付き合う。
領家 翔平(りょうげ しょうへい)
壮一と亜摘の息子で壮平の孫。なぜか壮平のリハビリを邪魔する。
溝呂木 郡司(みぞろぎ ぐんじ)
「香月地所」の株主。年齢は玄太郎と同じくらいで、スキンヘッドで顎に白髭を蓄えており、とても堅気のものには見えない。右翼の肩書をもつ総会屋で、紋付羽織袴で株主総会に出席し、脳梗塞で倒れた玄太郎を取締役から解任させようと目論む。

要介護探偵の快走

新しい車椅子で次男・研三と競争して負かせて機嫌上々の玄太郎は、この界隈のマドンナである神楽坂美代に声をかけられ、高齢者ばかりを狙う通り魔がいるという話を聞く。後日、その美代自身が襲われ、骨折と打撲で全治4か月の怪我を負ってしまう。見舞いに行った玄太郎は美代と他の年寄連中に言われて嫌いな警察に相談に行くが、担当は強行犯ではなく生活安全課の対応になっており、しかもその捜査に真剣さも感じられなかった玄太郎は結局キレて、自らがおとりとなって捜査することを決める。みち子が止めるのも聞かずに実行するが、結局襲われることはなく、代わりに町内の違う場所で、玄太郎と同じく車椅子生活で、最近他人の家の植木鉢を払い落とすという問題行動が目立つ佐分利亮助が襲われる。警察にお願いされ、佐分利家に赴いて亮助と事件の話をした玄太郎は1週間後、なぜか校区の小学校に行き、運動会の項目に口を出し、賞金100万円を懸けた車椅子レースをやると言い出す。そして運動会当日、競争は次々と脱落者が出て、最後は佐分利亮助と玄太郎の一騎討ちとなる。

神楽坂 美代(かぐらざか みよ)
香月家の近所に住んでいる80歳の老女。昔からこの界隈のマドンナで、現在もまるで歳を感じさせず上品で皆の姉貴のような存在であるため、玄太郎も頭が上がらない。20歳過ぎに婿養子を迎えたが、早くに亡くしてしまってからはずっと寡婦である。
佐分利 亮助(さぶり りょうすけ)
香月家の近所に住む車椅子の老人。90歳で区内最高齢。生白い肌には無数の老人班が浮かび、白髪と盛大な髭を生やしている。昔は剣道の道場の師範を務めていた。
佐分利 征三(さぶり せいぞう)
亮助の息子。2年前までは民間企業につとめていた。兄が亡くなってから亮助の面倒をみるために10年以上同居している。
佐分利 達子(さぶり たつこ)
征三の妻。車椅子を押して近所を散歩するなど、亮助の介助をする。
石井(いしい)
中署生活安全課所属の刑事。おっとりした女性。
纐纈(こうけつ)
高針にある纐纈製作所(車椅子の製造販売会社)にいる技術屋。玄太郎の車椅子を担当している生真面目そうな男。元は大手自動車メーカーにいたが、その会社がF1参戦を取りやめたために脱サラした。

要介護探偵の四つの署名

玄太郎とみち子があおい銀行に行くと、支店長の小山内がいつものようにご機嫌取りに近寄って来るが、今日は計画停電で14時閉店だという。間もなくその閉店時間となり、シャッターが下りようとしていた時、4人の男たちが滑りこんできて拳銃を高々と挙げ、玄太郎とみち子を含めた23人はあっという間に制圧されてしまう。怯えるみち子や客たちに比べ、飄々と携帯カメラで犯人達を撮ろうとする玄太郎は怒りを買うが、犯人達はみち子や小山内が必死に玄太郎をかばうのを見て、その正体が財界の重鎮であることに気づく。玄太郎の存在を楯にとって警察を牽制しつつ、停電で無意味になった電磁ロックがかかった地下に眠る大金庫を開けさせ、まんまと金地金を手にした犯人達だったが、そんな4人に玄太郎は説教という名の説得を始め、4人が実は黒幕に騙されているという事実を突き付ける。

アル / 赤木 良輔
銀行強盗。リーダー格。
ビリー / 坂東 清隆
銀行強盗。コンピュータや無線担当。現実的で冷静。
チャーリー / 千葉 康明
銀行強盗。小柄。目の前の金に浮かれるが、リーダーの言うことには1番てきぱきと従い、動く。
ディック / 土肥 哲夫
銀行強盗。腕力が強く、力仕事を引き受ける。
小山内(おさない)
あおい銀行栄支店の支店長。流行の軽量フレーム眼鏡をかけた神経質そうな瓜実顔。どんな時でも営業スマイルを欠かさないが、なぜか痛々しい。
桜庭(さくらば)
愛知県警本部長。この事件の捜査本部の最高責任者。言動や臭いは官僚のようで、事件の解決よりも自らの人事のための功績を狙っている。爬虫類を思わせる目をしている。
高城(たかぎ)
愛知県警特別対策班。

要介護探偵最後の挨拶

玄太郎が所有するマンションに入居を希望した岬洋介との面接を終えた後、玄太郎は自身が後援会長を務める国民党副幹事長の宗野から、国民党愛知県連代表の金丸公望が誰かに毒を盛られて死亡したと聞かされる。みち子と2人で金丸邸へ向かい、現場にいた刑事の桐山に状況を説明させるが、警察もカルロス・クライバーが指揮する「ベートーベン交響曲第7番」の海賊版のレコードを再生中にリクライニング・チェアの上で悶絶死したということと、毒物は青酸カリだが帰宅してからは何も口にしておらず摂取経路がわからないと首をひねっている状態であった。公望の死後、コレクター仲間だった萱場という男がレコード目当てにやって来たと聞き、その希少価値を知った玄太郎は、これ目当てで殺人が起きてもおかしくないと考えるが、やはり毒を飲ませる方法が思いつかない。息子の龍雄の出馬選挙や、今回の事件について責任を問われるであろう代表質問を控え、事件の早期解決を宗野から懇願された玄太郎は、もっと音楽に詳しい者ならわかるかもしれないと、岬に意見を求める。

岬 洋介(みさき ようすけ)
玄太郎所有のマンションの入居希望者。愛知音楽大学の臨時講師。ペーパードライバー。
玄太郎に頼まれ、金丸公望殺害事件のトリックを考える。
金丸 公望(かねまる きんもち)
国民党愛知県連代表。国民党古参議院で幹事長の経験もある。声も図体もでかいが押しが強い親分肌だが、裏表がなく人懐っこい笑顔が愛され、長年支持され代表を務めてきた。町の修理工場で一緒に働いていた玄太郎とは幼い頃からケンカもしてきたが、女房にも見せない部分を互いにさらけ出すような旧知の仲。レコード鑑賞が趣味。5年程前に肺気腫を患った。
官有地払下げの入札で産廃業者の便宜を図ったのではないかという汚職疑惑が取り沙汰されていたが、自宅で青酸カリを摂取したことにより死亡する。
宗野 友一郎(むねの ゆういちろう)
国民党副幹事長。金丸公望の信奉者。
金丸 裕佑(かねまる ゆうすけ)
公望の孫。細面の青年。愛知音大3年生でチェロ担当。
金丸 龍雄(かねまる たつお)
公望の長男。勤めていた塗料メーカーが倒産した時に玄太郎が拾ったため、玄太郎の元部下。その後公望にひっぱられ、県会議員となった。公望ほどの図太くなく、どこか繊細。
金丸 和美(かねまる かずみ)
龍雄の嫁。
萱場(かやば)
レコーディングスタジオカヤバの代表取締役。顎髭を生やし、がっしりとした屈強な山男のような風貌。目は金貸しのように相対するものをにらみつける。公望とはコレクター仲間。
鳴海 真一(なるみ しんいち)
「国会の爆弾男」と呼ばれる、過去には野党で幹事長まで務めた男。スッパ抜きと舌鋒鋭い追及で議員が過去何人も辞めている。

# by hageuz | 2020-10-04 19:20 |
さよならドビュッシーでこの作家が面白いと感じたので岬洋介シリーズ2弾を読破。1作目ほど難解ではなかった謎解きでしたが、相変わらずピアノやバイオリンのシーン描写は素晴らしい。読んだらネットで曲を探して表現を検証する作業は1作目同様行っていました。個人的には少し違った解釈もありましたが、作者が小説を仕上げるために聞き込んだのだろうなぁと推測できます(普通に数回聞いただけで小説にかけたとしたら天才です)最近の人気作家同様、新作リリースの早い作家さんなので追っかけると大変なことになりそうですが、次回は別のシリーズを読んでみます。
おやすみラフマニノフ【2010年10月26日発行】_f0064229_20025300.jpg
【作品情報】

おやすみラフマニノフは、中山七里による日本小説ピアニストの岬洋介が登場する岬洋介シリーズの第2作である。

なお時系列順として『さよならドビュッシー』のすぐ後とされている。


【あらすじ】

音大生の城戸晶は生活に困窮していた。実家からの仕送りが途絶え、練習時間をアルバイトに充てても学費を払いきれず、学生課からも請求書が届く有り様だった。そんな中、“稀代のラフマニノフ弾き”と呼ばれる学長・柘植彰良と定期演奏会で共演するメンバーをオーディションによって選ぶことが須垣谷教授によって告げられる。この演奏会は国内外の音楽関係者からも注目されているうえ、コンマスストラディバリウスを使用でき、更には後期の学費も免除されるのだ。これを蜘蛛の糸と捉えた晶は、臨時講師の岬洋介に励まされながらも一心不乱に練習に取り組み、なんとかコンマスの座を射止める。それからの日々は、晶にとってストラディバリウスと共に過ごせる夢のようなものだったが、ある日、彰良の孫娘である初音が使用する時価2億円のチェロ(ストラディバリウス)が保管室から盗み出され、保管室の楽器は事件が解決するまで使用できなくなってしまった。

晶に頼まれて岬が現場を検証した結果、小さな半透明の欠片が見つかった。岬は何かに気付いたようだったが、晶が答えを訊く前に須垣谷教授が岬を連れ去ってしまう。晶がこっそりあとを付けていくと、大学関係者が大麻の密輸に関わっているという話が聞こえてきた。その後も準備室に保管されていたピアノの破壊、大学の公式サイトへの殺人予告など事件は続き、ついに大学の理事会は定期演奏会を中止することを発表した。だが、オケのメンバーにとって、国内外の音楽関係者が集まる定期演奏会は将来の懸かったものであり、理事会と対立することになる。そんな一触即発の状況で岬はある提案をし、その場はなんとか取り持たれた。しかし、その提案とは「学長の代わりとして下諏訪美鈴にピアノを弾いてもらう」というものだった。これには美鈴の性格を知るオケのメンバーからの反発があった。だが、美鈴のピアノは岬の新鮮で具体的な指導によってオケとの親和性を次第に増していくのだった。

そして、演奏会当日。総勢56人のオーケストラが渾身の演奏を終えたあと、岬は一連の事件の真相を語り始める。



# by hageuz | 2020-09-24 20:03 |

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